今日も、エレベーターはバリアフリー化のため、上下階の移動を楽にするために動き続けています。
しかし、エレベーターにも他の物と同じように「寿命」があり、老朽化したエレベーターは日が進むにつれてどんどん増えていきます。
この記事では、ロープ式のエレベーターを中心に、エレベーターの更新とは何か?更新専用機とはどんなものなのか?などを紹介します。
老朽化エレベーターの更新時期!各メーカーの更新専用機を紹介!というテーマでお届け致します。
実際に設置されているエレベーターが「新規設置」で最初からあるものなのか「更新」されたものなのか見分けることもできます。
それでは見ていきましょう。
老朽化したエレベーターとは?
まず、「老朽化したエレベーター」は設置からどれくらい経過したものを指すのでしょうか。
エレベーターの耐用年数を確認します。
耐用年数には税法で規定されている法定耐用年数と、物理的な寿命を示す計画耐用年数があり、前者は「17年」、後者は「25年」と定められています。
また、後者は公益社団法人ロングライフビル推進協会(BELCA)によって定められています。
各メーカーではエレベーターの寿命についてどのようにアナウンスしているのでしょうか。
大手メーカーでは短いところで、概ね「20年」としているようです。
したがって、およそ20年が経過したエレベーターが「老朽化したエレベーター」といえそうです。
老朽化したエレベーターの特徴
ここでは、利用する方からみてわかりやすい老朽化したエレベーターの特徴を紹介します。
1.戸開閉ボタンが階数ボタンよりも「上」にある
新しいエレベーターでも時々見ますが、老朽化したエレベーターでは三菱電機製を除き戸開閉ボタンが階数ボタンよりも「上」にあることがほとんどです。
現在は戸開閉ボタンを階数ボタンの「下」に設ける方が圧倒的多数です。
操作盤のレイアウトからエレベーターの新旧を区別する1つの目安となりそうです。
2.ドアレールもしくはその付近にメーカーが書かれている
老朽化したエレベーターではドアレールやその付近にメーカーが書かれていることが多いです。
また、そのエレベーターが更新されてもそのメーカー表記が残っていることも多く、更新されたエレベーターかどうかを見分ける1つの判断材料にもなります。
ただし、比較的新しいエレベーターでもドアレールにメーカーが書かれていることがあるため、これもあくまで「目安」ということになりそうです。
3.乗り心地が良くない
やはり老朽化したエレベーターでは乗り心地が良くありません。
特にVVVFインバーター制御でないエレベーターでは乗り心地の悪さが目立ちます。
「到着時に揺れる」・「急発進・急停止する」エレベーターは、VVVFインバーター制御ではないのかもしれません。
4.床とかごで段差が発生する
こうなってしまうと乗り降りの際に転倒してしまう恐れがあるので足元に注意したいところです。
老朽化したエレベーターでの各メーカーの対応
各メーカーでは、エレベーターの保守部品を用意しています。
しかし、老朽化したエレベーターでは保守部品の生産が終了しており、在庫限りとなっていることもあります。
各メーカーでは古い機種から部品供給を停止し、今後、部品供給を停止する機種についてはWebサイトで公開するなど、エレベーターの更新を呼び掛けています。
老朽化したエレベーターが故障したら
エレベーターは故障するときは故障します。
しかし、老朽化したエレベーターと比較的新しいエレベーターとでその後どうなるのかが変わります。
比較的新しいエレベーターの場合、故障したら保守部品を使うなどして修理した後、使い続けることができます。
しかし、老朽化したエレベーターの場合、故障しても保守部品がないため修理することができず、エレベーターを更新するまで再び使うことができなくなってしまいます。
したがって、老朽化したエレベーターの更新は避けては通れません。
エレベーターの更新専用機について
エレベーターの更新には時間とコストがかかります。
そこで、各メーカーは短工期・低コストを実現した更新専用の機種を販売しています。
各更新専用機共通の特徴
更新専用機には、ある共通した特徴があります。
それは、「必要なところだけ交換する」ということです。
部品を全部交換していては時間・コスト両方かかってしまいます。
そこで、更新専用機はまだ使えるところはそのままに、交換が必要なところだけを交換することで短工期・低コストを実現しています。
それでは、大手5社の更新専用機を見ていきましょう。
三菱電機の場合
三菱電機では、「エレモーション・プラス」という名称で販売しています。
エレモーション・プラスは、エレベーターの連続休止期間が約1週間と短いです。
見た目は「アクシーズ」の最新モデルに準拠しています。
また、「エレモーション・プラス[ゼロ]」も販売しています。
こちらは「アドバンスV」・「グランディ」からの更新のみに対応しています。
新旧双方の機器を制御できる「ハイブリッド制御盤」によって更新期間中でも作業をしていない時間帯はエレベーターを利用することができます。
したがって、エレベーターが使えない日をゼロにすることができるようになりました。
日立ビルシステムの場合
日立ビルシステムでは、「G_Select(ジーセレクト)」という名称で販売しています。
予算や更新期間に応じて更新内容を選ぶことができます。
見た目は「アーバンエース」に準拠しています。
また、日立ビルシステムでも更新期間中の連続休止期間をゼロにした機種「G_Select+U」があります。
G_Select+Uは、インターフェースユニットを設置して古い巻上機と新しい制御盤に互換性を持たせることで、古い巻上機と新しい制御盤が混在していてもエレベーターが稼働できるため、エレベーターが使えない日をゼロにすることができるようになりました。
東芝エレベータの場合
東芝エレベータでは、「エルフレッシュ」というテーマでエレベーター更新の提案を行っています。
「エルフレッシュ・パック」は機械室の機器や制御に関する機器の交換を行う「ベーシックパック」が標準工期7~8日と短いです。
見た目は「スペーセルGRⅡ」に準拠していますが、デザイン性や安心機能をプラスすることができ、エルフレッシュ・パックは多様なニーズに応えることができます。
また、「エルフレッシュ・ライト」は標準工期5日で制御盤を主体に機器交換を行います。
さらに東芝エレベータの「時短リニューアル」ではエレベーターの終日停止期間が2日と短いですが、「エレメイト セレブラムVF」からの更新のみに対応しています。
日本オーチス・エレベータの場合
日本オーチス・エレベータでは「Gen2 MOD」・「Renova(リノーバ)」の2つを販売しています。
見た目はどちらも「Gen2 Premier」に準拠しています。
Gen2 MODはロープからフラットベルトに交換されますが、リノーバはロープです。
また、Gen2 MODの中でもGen2 MOD Greenは機械室がないフラットベルト式エレベーターになります。
フジテックの場合
フジテックでは、「制御リニューアル」が基本の更新プランになります。
制御リニューアルは安全性・快適性・デザイン性の向上をトータルで考えたメニューになっています。
また、フジテックでは更新期間中の連続休止期間をゼロにした「エレベータ制御盤交換パッケージ」があります。
エレベータ制御盤交換パッケージは、「モジュール工法」と呼ばれる改修作業の工程をモジュールごとに分割したフレキシブルな工法で、エレベーターが使えない日をゼロにすることができるようになりました。
その他、モジュール工法によって完全停止日を設けて総工期を短くしたり、エレベーターが終日利用できる日を設けたりすることもできます。
標準仕様ではロープ式で4日間です。
見た目はどちらも「エクシオール」に準拠しています。
観察すると面白い変わったエレベーター
更新されたエレベーターの中には、変わったエレベーターも登場しています。
ここではその例を紹介します。
1.更新前から使われていたインジケーターが使われ続ける
更新前のエレベーターで使われていたアナログインジケーターが更新後でも使われることがあります。
通常は埋められるか、残っていても動きません。
2.乗り場操作盤が交換されずに使い続けられる
通常、操作盤は乗り場の操作盤を含めて交換されます。
しかし、乗り場操作盤が更新前のまま使い続けられることがあります。
エレベーターに乗るまで更新されているかどうかわかりません。
3.更新されていても見た目に変化がない
見た目が古くても、制御盤などが交換されているパターンです。
更新されているかどうかを見た目で判断することはできません。
関連記事 油圧式エレベーターの仕組み/製造中止?構造やメリット・デメリット
まとめ
どんなものであっても、いつか寿命はやってきます。
エレベーターでもそれは変わりません。
今稼働しているエレベーターもあっという間に寿命がやってきて更新の時期に入るかもしれません。
更新専用機は必要なところだけを交換することで短工期・低コスト化を図っています。
乗り場操作盤が交換されずに使い続けられるなど変わったエレベーターも登場しました。
メーカーの中には更新期間中の連続休止期間をゼロにした更新専用機を販売していますから、これから老朽化したエレベーターの更新も加速しそうですね。
コメント